ポケットのなかみ


知人の女性と立ち話をしていたときに、ある女性が通り過ぎて知人が会釈をした。少し日に焼けた肌によく似合う若葉を少し深くしたような緑色の半袖のニットを着て、颯爽と歩き過ぎるその女性はおそらく50歳前後。もしかしたら、50歳を少し超えているぐらいかと思う。知人いわく、彼女は丸の内のオフィスで役員秘書をしており、三ヶ国語を大変流暢に操り、特に英語が堪能で通訳や翻訳家としてもやっていけるのではないかと教えてくれた。私より幾つか若いと思われる知人は仕事が関わるためにその女性としばしば会っており、彼女の優秀さと人柄のため、その人のことを尊敬しているんですと話してくれた。私はその日に焼けた女性とは初対面でほんのわずか見たにすぎなかったけれども、その話で何かハッと伝わるものがあった。


時にウダウダと仕事について、またこれからの生活について迷いが生じたり、欝々とした気持ちに駆られることがあるが、なんていうか、自分の強みというものがしっかりとある人はどんな時代でも強いし、年齢を重ねてもそれは活きるのだと。まだエネルギーにあふれる若いころであれば、がむしゃらに時間を費やす体力も気力もある。でも、年齢を経てくると、そういうがむしゃらさより、ゆったりとした時間を持ちたいというようにシフトしてきており、そういうときに「強み」のおかげで生活と仕事のバランスを自分流に保てることもできるだろう。


わたしのポケットには何があるのか。中を探り、その手に掴んでいるものを広げてみよう。