田中真吾 −踪跡−展@INAXギャラリー2


最初、少し気分が悪くなった。黒く炭になった何重にも重ねられた紙は生々しく感じたから。まるで、燃やされる前までは命があったかのようで、無機物だとは思えなかったのです。白い立体物に走る黒い炭が連なると、塊としての力強さがあると感じた。

田中真吾は火で紙を焼いた作品を制作しています。幾重にも重ねたまっ白な紙に炎を走らせると、焼けた亀裂から炭化した紙が次々とまくれあがって盛り上がり、墨色の灰の襞となります。白と黒のコントラストは涼やかで、しかし炎の記憶を秘めて熱を感じさせます。それは黒い花に残る傷跡のような揺らめきの感触です。
人類の誕生から、火は闇に光を与える文明の象徴として常に私たちの身近にありました。時としてそれは本能的な恐怖である一方、人を惹きつけ、魅了してやまない存在でもあります。炎を見つめる時の、止め処もない心象風景。その根源的に湧き上がる心の動きを、田中は火が持っている性質を引き出しながらきわめてシンプルなかたちで表現し続けています。
―ホームページより

田中真吾 −踪跡−展
Tanaka Shingo Exhibition
昨日、11月24日(水)まで
http://www.inax.co.jp/gallery/contemporary/