仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護@東京国立博物館

ある意味で非常に心をゆすぶられた展示。
仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護
昨年もホテルニューオーターニ*1で平山氏の絵をみているのだけど、今回は「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」というイランの代表的な映画監督、モフセン・マフマルバフ氏によるアフガニスタンのレポートを読んだばかりだったので、再びバーミヤンの石仏の絵を見たときに自分がどう感じるのか知りたかった。
その本を読んでしまった今では、タリバンによるバーミヤンの仏像破壊も人による行為というより、まさにそのタイトルの通り、仏がその国の人々に何もできず、街の通りに餓死して積み重なる人々、あるいは地雷で命を亡くし、あるいは少しでも生き延びられるようにと隣国に亡命しようとしても死亡率10%の故郷に即追い返されるというのを、ただただ目前に何もできない恥辱さゆえに崩れ落ちたというのが深いところでの真実なのではないかと思うほど。
そんなこともあってアフガニスタンのコーナーには思い入れが強かった。そして、そこに入った途端涙があふれ出た。
仏像破壊については世界中にニュースが流れ、注目も集まるが、その国の悲惨さにはほとんど話題にならないというこの「無関心」さがそこにあるような気がしたから。
平山郁夫氏は文化財保護に力を尽くした。文化財保護は重要だし、特にあのように過酷な地域の文化財を保護するということは重要かつ大変な仕事だと思う。
ただし、さらに望むならば、その足でアフガニスタンに降り立ち、その目であの破壊された仏像を見たのであれば、そこで一日一日を生き延びようとしている人々にも焦点を当ててほしかった。そういう絵も描いてほしかった。
素晴らしい文化、歴史をもち、美しい土地だとしても、そこで食べることもできず、働くこともできず、学ぶこともできず、どうして平和に暮らすことができるのか。戦争や麻薬に手を染めるのは生きるため。それだって結局彼らは大したお金を手にすることもなく、権力者たちや他の国が潤うための道具にすぎない。仏像を破壊したタリバンも元をたどれば飢えた孤児たち。どうしてそんなことになったのか。それほど過酷な地域だと絵で表現してほしかった。それを世界に知らしめてほしかった。

仏教伝来の道 平山郁夫文化財保護
東京国立博物館
3/6(日)まで
http://www.nhk.or.jp/event/hirayama/

アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ

アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ

  • 作者: モフセンマフマルバフ,Mohsen Makhmalbaf,武井みゆき,渡部良子
  • 出版社/メーカー: 現代企画室
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: 単行本
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モフセン・マフマルバフ氏の娘、ハナ・マフマルバフさんが20歳で作成したアフガニスタンの少女を主人公にした映画「子供の情景」の紹介。戦争がいかに子供たちの世界を深く傷つけているのか。見たい。