帰国の日

曇り。気温13度。
帰国の日。


少し時間があったので、
スフォルツェスコ城へ行き、朝の散歩をする。


ヒンヤリとして静かな空気。清々しい。


初めてここに来たとき、駅を出てどこへ向かえばよいのか戸惑ったことを思い出した。
でも、今日はこの朝の空気を気持ちよく吸い込む。


青々とした芝生、
芝から発生する淡い霧、
城壁の煉瓦に垂れ下がる蔦。


曇りがかった上空では城に巣でもあるのか
つばめがさえずりながら飛んでいる。


丸石の砂利道を歩き、城を抜けた。
カイローリ駅の噴水がある広場を抜け、
ダンテ通りをまっすぐドゥオモへ向かった。


そういえばヴィットリオ・エマヌエーレ2世
ガッレリアにある通路中央の雄牛に
踵を乗せて一回転していなかった。


幸せになれるように願いを込めて、一回転。



気がすんだところで、小腹がグーッとなる。


カフェでパニーニを食べ、アパートへ戻った。
帰り支度はすでに済ませていたので、カプチーノを飲み、
食器を片付け、スーツケースを運び、部屋の鍵は室内に残したまま、
ドアを閉めた。この部屋ともお別れ。

アパートを降りるエレベーターで一緒だった老人と
イタリア語と英語でなんとなく会話し、


   ここに滞在してたの?
   そうです。
   寒いね。
   雨降るのかしら?
   降らないよ。学生?
   いえ、違います。
   さようなら。
   さようなら。


ミラノ中央駅からバスでマルペンサ空港へと出発しました。