ベジャール・ガラ 感想

ということで、2月9日のバレエについての感想。
思ったまま書き留めているのでいつも以上に散文。


   碧く白い地中海が波打つように
   男女の集団があらわれ、関連性を持たせ、揺れ、踊る。
   

   ソロの後藤さんは中世ギリシャの若者のように
   中心人物あるいは語り部のように生命の歓びを表現。
   パ・ド・ドゥでは、初々しさ、若さがある表現。
   変わってハサピコでは、大人の妖艶さが表現されていた。


   そして、光に反射する波間が引き潮とともに退くような明るさを湛え幕を閉じる。


   貧民窟のような街はずれ。
   男性が娼婦を演じ、女性がその娼婦を買う男を演ずる。


   背も高く体重のある男性ダンサーがヒール姿で
   セクシーにあるいは蓮っ葉に踊るのは
   なんとも不思議な感触、違和感。
   そして、この違和感が醍醐味でもあるのだと思う。


   首藤さん演じる中国の役人。
   その不思議な魅力を立てる娼婦に誘惑されつつも
   実直さを湛えているが、
   だんだんとその暗黒さに打ちのめされていくような過程が印象的。

   しかし、その娼婦も誘惑が成功しているとは言えず、
   己の心も消耗していく。


   欲望と欲望に負けない力のせめぎ合い。
   この戦いってとてつもなく先が見えない。


   なんともいえない心持を残して終わる。
   そういう意味でも素晴らしいバレエだった。

   黒闇。
   あのメロディーとともに照明がギエムの右手の先の見照らす。
   暗闇に浮かぶ白鳥の羽のように舞う手の先。
   そして、その羽ばたきから舞台の上が明らかになっていく。


   黒い背景。
   舞台中央に赤い円台。
   漆の朱と黒の舞台。
   周り三方に黒く四角い椅子が並び、男性ダンサーが同じ格好で座っている。


   シンプルなリズムに乗せ、ギエムの踊りは心臓の鼓動のように時を刻む。
   それにあわせて、徐々に男性ダンサーも立ち上がり
   ギエムを中心に踊り始める。


   ギエムは燃え盛る炎のようでもあり、
   鼓動を打つ赤い心臓のようでもある。
   そして、シンプルなボレロのリズムに合わせ
   ギエムを中心にして、男性ダンサーも含めた一つの生き物のように
   リズムを刻み、踊り続ける。

   
   そして、音とリズムが最高潮になり、時が止まる。




ギエムのアンコールのときの笑顔はチャーミングでかわいく、
観客へのサービス精神もあったのが印象的だった。
大物って決め細やかで思いやりの深い人のことだわ。


これらの素晴らしい作品を生み出して残していったベジャールに感謝。
この公演を開催してくれた東京バレエ団に感謝。
封印していたボレロを踊ってくださったギエムに感謝。
そして、この場に立ち会えたことに感謝!


ベジャール・ガラ - * cosi cosi *