ユートピア ―描かれし夢と楽園―@出光美術館

夕方、友人と会う前に時間があったので、出光美術館で「ユートピア―描かれし夢と楽園」を観てきました。ユートピアと言えば私が思い起こすのは桃源郷とトマス・モアのユートピア。でも、今回の展覧会は政治も管理からも切りはなれた、夢と楽園という名が現すように桃源郷が近いと思います。各タイトルにも記されているとおり、夢想、蓬莱、美しい女性に恋もあり。華麗なるお花畑もあるとすれば、やはり桃源郷でしょう。

最も胸躍らせたのが、白地に桃色の牡丹画図の景徳鎮「粉彩牡丹文瓶」。そして、俵屋宗達の「四季草花花図屏風」。これって、現代のキャス・キッドソンのバッグにキュンとなるのと似ていると思ってしまったのですが、不届きな考えでしょうか…。特にこの「四季草花花図屏風」は、どこかの城の姫君の部屋に悠然と据え置いてあったのではないかと想像するのは楽しいものでした。季節問わない金色の背景に桃、赤、橙の花々にテンションがあがったところで、横の立原杏所の三幅の軸、「雪月花図」の静かなる世界に正気に戻されました。
他に鈴木其一の秋草図の中央の葛の葉のマットな緑色とやはりマットな朝顔の青さをじっくりと堪能。

先日読了の「江戸の絵を愉しむ」を参考に、掛け軸や屏風の見方を今までと少し変えてみました。上から絵が現れる様、横へと開かれる様を想像し、その絵を見た人たちの気持ちに迫ってみました。雪月花などの山なども、高い山からだんだんと視線が下りてきて、胡粉の雪が輝き、しんしんと積もっていき、一見の山小屋が現れ、そしてもう少し降りると、老人が一人、出先から帰ったのか門から家に戻るところ。こんなストーリーを追うのも楽しい。また、美術の楽しみ方が増えました。

ユートピア ―描かれし夢と楽園―

江戸の絵を愉しむ―視覚のトリック (岩波新書)

江戸の絵を愉しむ―視覚のトリック (岩波新書)